開催日:
毎年4月20日
建仁寺四頭茶礼とは、起源は中国の南宋・元の時代、大きな寺院にて行われていた茶礼で、日本には鎌倉時代に栄西禅師が禅と共に伝えられたとされています。室町・桃山時代以降流行し盛んに用いられた作法です。
当時は、特別にお招きした客のためのお茶であるから特為茶といわれ、一般大衆に呈茶する普茶とは趣がちがいます。天目台、天目茶碗を使用し貴人扱いはそのためです。この作法は、禅宗寺院内の修道行事・法式・作法等を規定した清規に従うものです。
江戸時代には建仁寺開山忌(ご命日6月5日)の食事儀礼の一部として行われていましたが、その後、栄西禅師の降誕会(お誕生日4月20日)四頭茶会となり、より広く一般的に知られるようになりました。現在、繁栄を極めるほどとなり、2012年3月には京都市登録無形民俗文化財に認定されました。
午前八時から方丈の室中に一山の僧が入堂し、建仁寺管長猊下ご導師のもと、栄西禅師を偲ぶ法要が厳修され茶会が開始されます。四名の正客に準じて相伴客六名が従い四列、計二十八名が各々の席に着坐をします。席入り前に、茶席における座席配置図が準備されていて、事前に自分の席を確認出来るよう便宜がはかられます。入堂すると四正客の席に坐牌と呼ばれる裂が置かれており、それを四つに折り畳んで隣に置きます。一同が着席すると、侍香の僧により正面ご開山の頂相前で献香し、中央卓前にて左右両手で1度ずつ焼香し席を清めます。座屏が室外に出され、給仕が始まります。
お点前とお菓子の運び込みは四名の寺僧が行いその役を供給、水屋からの取次をする役を提給といい行者(非僧の寺務諸役の従業者『現在は護持会の建和会会員』)があたります。
供給の僧は縁高に入ったお菓子(紅白の紋菓、椿の葉に載せた「ぴりコン(醤油で炊いた蒟蒻)」)と抹茶「建久の白(榮西禅師が禅とお茶を日本に伝えられた元号にちなんだ茶銘)」が入った天目茶碗を運び相伴客に配り、各々の客人の前でお点前を行います。
その作法は供給が、口に茶筅を挿した浄瓶を持って入堂し客人が捧げ持つ天目台に載せた茶碗にお湯を注ぎ茶筅で点てそのまま喫します。その際の供給は正客の前でのみ胡跪(左たて膝の姿勢)し、相伴客の前では中腰のまま点て区別されています。禅僧寺院のお茶は先人の遺徳を偲び、修道の方便、心のいましめとして頂くことになっています。
中央の掛け軸は、本日降誕の日に当たる当本山のご開山榮西禅師(1141~1215年)の頂相(ご絵像)です。左右には室町時代の画家秋月筆「龍虎の図」が、掛けられています。禅画の好む題名の一つで、水墨画が持つ禅味が本日の茶席を引き立てています。
入口の左右にある1mばかりの屏風は座屏または座頭屏風ともいい、四頭の位置に絵模様のある金襴の布片の坐牌が置かれます。正面には螺鈿の前卓が、中央に螺鈿の香炉台と青磁の香炉が飾られ、いずれも中国から渡来した珍器で、来客のおもてなしの意味も含まれています。